引かれ者の小唄

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 巻き上がる波に、破裂する真空に、蹂躙され押し潰され吹き飛ばされ、木端ほどの重みで引き裂かれ散る、命のいとなみを覚えている。 苦鳴、絶望、慟哭、悲嘆、憎悪、諦念、誰にも望まれなかった破綻と喪失の一系列、それをもたらしたの…

domestique’s high – 6

 ひとしきり笑ってから、ブラスカは取ってつけたように、そうそう、と話題を切り替えた。「私が好き勝手にさせてもらっていた件だけれども」「……」「あっ、なんだいその目。文句があるなら最後にまとめて聞くから、今は取っておいてく…

domestique’s high – 5

 ——王が姿を消して十年が経つ。 アーロンはデイリールーティンを終えると、車体のメンテナンスを専門のスタッフに任せ、軽くシャワーを浴びてから訓練施設の出口に向かう。その背中を追う声があった。「あ、アーロン! 待てって、ア…

domestique’s high – 4

 あのゴールから十日後、アーロンはチームの訓練所の廊下をぐったりと歩いていた。顔が筋肉痛を通り越して痙攣寸前だ。 史上最大の番狂わせがラストを飾ったツアーのあと、チームブラスカは一躍有名チームとしてメディアの集中砲火を浴…

domestique’s high – 3

 それからの数日、ツアーは大きなトラブルもなく最終日に向かっていた。マカラーニャ、ベベルと続き、次第に走者の数を減らしつつもスタート地点であるナギ平原に戻る。往路ではガガゼトのナギ平原側を登り降りしたが、今度は御山の向こ…

domestique’s high – 2

 そうして迎えたグランドツアー初日。 スタート地点はナギ平原。チームブラスカの士気は恐ろしく高揚していた。昨年の好成績に加え、ジェクトの参入によってチーム全体のレベルが大きく上がった手応えがある。今年は区間優勝や敢闘賞だ…

domestique’s high – 1

・現代ロードレースAUです。各地の位置関係は原作のスピラを参照しています。・ロードレース関係の知識がほとんどない人間が書いています。リアリティチェックは行っていません。現実のロードレースに即さない描写があっても見逃してく…

domestique’s high – 7

「しっかしブラスカよぉ、オメエどんだけ話長えんだよ。待ちくたびれて寝ちまうとこだったぜ」「ははは、ごめんごめん。アーロンには全部知っておいてもらいたくてね」「ジェクトさんに同意します。予定していた時刻より五十三分オーバー…

domestique’s high おまけ

 限りなく現代っぽいパラレルワールドのスピラで、ロードレースの頂点を目指すジェクアーとブラスカ様の話でした。  以下、キャラクターのざっくり設定と時系列まとめ。 【ジェクト】 とんでもなくすごいロードレーサー。どんなタイ…