mindless

【mindless】愚かな、思慮のない。自分の行いがどのような意味を持つか理解しないさま。  あ、と思った時にはもう遅かった。フリオニールの瞳孔が一瞬開いて、すぐに鋭くなる。口もとがぐっと震えて、いつもよりずっと低い声が…

The coast is clear

 ああ、なんて、自分勝手で臆病でずるい男なんだろう、こいつは。  このとんでもない大所帯による飛空艇の旅にも慣れた。ティーダの知っている飛空艇とは少し具合が違うようだが、馬鹿でかい船を飛ばすのに特段の興味を抱かないティー…

喧嘩が下手なふたり

 喧嘩をした。「……出てってやる」「そうか」「こんな家、二度と帰ってこねえ」「勝手にしろ」 俺はソファに座ったまま、ティーダはソファを挟んで反対側に背を向けたまま、顔も見ずに捨て台詞を吐き合う。 どこからどう拗れたか分か…

映画『戦場のメリークリスマス』より

 どさり、と足元に転がされたのは、ぼろきれのように薄汚れた少年だった。「陛下、これは」「捕虜のようなものだ。貴様が監視しろ」「……俺が、ですか」「不満か? ろくな戦果も挙げられぬのだ、せめてこのくらいの役には立って見せよ…

ゆめのしま

 眠れねえの、と囁かれたのは、フリオニールが何度目かも分からない寝返りを打った時だった。「すまない、起こしたか」「んーん、おれも何となく起きちゃっただけ」 慌てて振り返ると、枕代わりに丸めたタオルに顔の半分を埋めたティー…

ポータブルムーン

 ああ、と驚き半分、落胆半分のフリオニールの声が聞こえて、ティーダは読みかけの雑誌から顔を上げた。「どーかした?」 キッチンカウンターの向こうで包丁を握る同居人――白々しい言い方してすみません、同棲中のコイビトです――は…

それから、愛情

「ティーダ、休憩にしよう」 そう言ってフリオニールが足を止めたのは、見渡す限り濃い緑がざわめく草原の真ん中だった。うん、と頷いたティーダは右手に提げたままだった愛剣を消して――当たり前のように空間から出し入れしているが、…

Ex machinaパロ

「――つまり、チューリングテストということですか?」 フリオニールの問いに、目の前の男はこともなげに頷いた。その指には今しがたフリオニールが署名したばかりの書類、守秘義務契約締結書が挟まれている。「なに、簡単なことだ。私…

王様ゲーム

 フリオニールが夕食の後片付けを済ませて戻ってくると、焚火の辺りでわっと笑い声が弾けたところだった。「おっ、フリオニールじゃん」「こっち来いよ」 目敏いバッツとジタンに手招かれる。火を囲んでいるのはこのふたりに加えてセシ…

210のベッド事情

 ベッドが壊れた。 ほぼ成人に近い男子二人、それもわりと体格のいいスポーツ選手と、規格外にガタイのいい学生兼肉体労働者(花屋の仕事は立派な肉体労働である)を毎晩乗せてくれていたベッドの寿命はあっけなく訪れた。いや、二人を…