映画『cake』より

 サイファー・アルマシーは死んだ。  ガルバディア政府によって発行された死亡通知書を受け取って、スコールと仲間たちは慌ただしく列車に乗った。誰もが口を閉ざしたまま、旧デリングシティでリノアと合流し、レンタカーで郊外の墓地…

Pause in end

 703番。それがサイファーに与えられた新しい名前だった。 ここはガルバディア国内にいくつかある拘置所のひとつだ。正確な場所は分からない。ガルバディア司法局の出頭命令を受け、F.H.からティンバーを経由して陸路で国境を跨…

千年午睡

 窓辺の鳥籠でカナリアが鳴いている。ぴいぴいと餌を強請るそいつに、はいはいと返事をしながら指を差し出す。我が物顔で俺の指を止まり木にしたカナリアは、翼を広げて滑空の真似事。風切羽を失ったくせに立派なものだ。 年季の入った…

秘め事

 月が明るくて星が見えない。我が物顔で闇を支配する夜の王者はスコールの眼前に迫り、その表面で蠢く魔物の姿さえ見えそうだった。 スコールはひとり、バルコニーに立っている。デリングシティでも一等の高級ホテルの最上階だ。視界を…

指揮官殿が粉薬飲めないってマジで?

 鬼の霍乱だ、と思うと同時に、隣で雷神がでかい声を出した。「槍が降るもんよ」「雷神、五月蠅」 げしっ。風神の相変わらずキレのいいローキックが脛にクリティカルヒットして、声もなく跳び上がる雷神を呆れた目でカドワキが眺める。…

噛みつく

 やわらかな微睡みから、スコールは覚醒した。人のいないプールから静かに浮上するように、朝に引き揚げられる。瞼は閉じたままで、カーテン越しのほのかな光を知覚した。そう遅くはないだろう、静かな朝だ。 深く息を吸い込む。ぐっと…

レンタル・仕返し

レンタル 「……ということでね、彼をぜひお借りしたいんだ」 はいこれ書類一式、とアーヴァインが差し出したクリアファイルを受け取る。スコールは自分の眉間に皺が寄るのを隠そうとも思わなかった。 ガルバディア・ガーデンに籍を置…

戦場の狗

 どう、と衝撃が先に来た。炸裂する手榴弾が積み上げた土嚢を吹き飛ばす。巻きあがる砂塵、飛び散る泥と石塊、ぶちまけられる内臓、悲鳴。衛生兵、と誰かが言う。メディック、メディックどこだ、頼むから来てくれ、死んじまう。もう手遅…

白昼夢_蛇足

・「ヴェルン」はもちろんV氏です。目はカラコン入れてました。髪型は神羅屋敷にてオヤスミする前のタークス時代のやつをイメージしてます。「ヴェルン」という名に特に意味はありません。・V氏はテロリストの企みを察知し、テロリスト…

白昼夢

 彼女がその男を拾ったのは、本当にただの偶然だと、彼女は信じている。  ウォールマーケットはミッドガルもろとも吹き飛んだが、だからといって歓楽街がなくなるわけではない。あからさまな人身売買が大手を振って行われることこそな…