投稿者: katsuragi_14
どうしようもないおとなたち
「なあフリオニール」「どうした?」 ちょいちょいとマントを引く手に、フリオニールは歩みを止めて振り返る。野営地を畳んで四人で歩き出してから、そう長くは経っていなかった。今のところはイミテーションともカオスの軍勢とも遭遇せ…
◯◯しないと出られない部屋
「怪しいものは見当たらないな」「というか、何もないね、潔いくらい」「こっちも何もなしっす」「同じく」 床に這いつくばっていた姿勢から同時に立ち上がる。四人揃って寝間着のままだ。「確かにテントで寝てたと思ったんだけど……」…
みんなでごはん
いただきまっす! とティーダの元気のよい声に、フリオニールが召し上がれ、と答える。その一瞬に、大皿からメインディッシュを黙ってごっそり持っていくクラウドに、ティーダが拳を振り上げる。 今日のメインは七面鳥に似た鳥のロー…
bite and beg
東の空が夜明けの色に変わって、セシルとクラウドはやれやれと伸びをした。ごりっと鳴る肩に、セシルが柔らかく微笑む。「お疲れ様、クラウド」「お互いにな」 ふたりとフリオニール、ティーダの四人は野営時の見張りを二人組で分担し…
状態異常:どく
とある夜。バッツはティーダと焚き火の番をしながら、薬師として常備薬を調合していた。これまでに拾い集めてきた薬草や動物のツノ、肝などを仕分けて用途別に混ぜこんでいく。「ほんっと器用だよなあバッツは」 &nbs…
真空回廊
その時、私と彼は醜悪な共犯者になった。 扉を閉ざしたのはジェクトだった。彼は扉に掌を押し当て、わずかに俯いている。脈打つ獣の心臓に似た瞳は伏せられ、ひくりと引き攣れるおとがいの線からこの男が歯を食い締めていることが分…
光の庭
第四章 光の庭 1 庭師は使用人宿舎の割り当てられた部屋、寝台の上に身を起こして瞼を擦る。今年の春はいやに眠い。 身支度を整えて食堂で朝食を済ませると、いつもの仕事道具を片手に仕事場に向かう。その間も何度か生欠伸を噛…
光の庭
第三章 ガブラス 1 それからしばらくして、ヴェインが旧ダルマスカの王都、ラバナスタに派遣されることが決まった。帝国政務官の筆頭、皇帝グラミスの継子である彼が、かの戦略的要地を抑えることになったのは当然のことだろう。…
光の庭
第二章 ヴェイン 1 それまで長らく勤めていた庭師はソリドール家と昵懇だが、さすがに寄る年波には勝てず、ついに引退を決意したのだという。役人とのいくつかの面談を経て――といっても男は喋ることが出来ないので、経歴書を提…
光の庭
第一章 ホワイトリーフ 1 男はインフォメーションセンターのカウンター前に立ち、数えられるホワイトリーフをじっと見つめていた。一枚、二枚、数多の手をわたり擦れたリーフはそれでも白く、カウンターのランプの光を反射して男…