タイトルが偏見のかたまり。
いや、ぜったいあるんだってスラムが。ベベルの外周には。
あのきらびやかな聖都市の城壁の内側はそりゃあもう完璧に整えられていて、エボン教の神官や僧兵や職員その関係者たちのためのうつくしい街が計画の上で造られているわけですよ。
とはいえ宗教都市には貧しいひとびとも集まるわけで、特に10の世界では定期的に『シン』がすべてを台無しにするので、かつての住まいと故郷とを失い窮した難民がベベルに身を寄せようとするのはほぼ必然でしょう。エボン教の連中もいちおう難民の一部を城壁の中に迎え入れはすると思うけど、計画都市は人口の増加に弱いはずなので、すべてを受け入れることはまあ現実的じゃないですよね。
ならベベルに受け入れてもらえなかったひとびとはどうするかというと、城壁に拠るかたちで難民キャンプを形成するはずなのです。(ここまですべて浅い知識に基づく偏見)
ちょっと長くなったので畳みます。
さて、僧兵アーロンはごく幼い時に『シン』の襲撃によって家族を失い、縁戚に連れられて壊滅した故郷から聖都ベベルまでやってきたわけですね。
幸運にも城壁の内側に受け入れられた彼らは、まだ赤子だったアーロンの面倒を見る余裕がなかったため、彼をベベルの僧院に付属する乳児院に預けるわけです。
こどもアーロンは慈しみ深いベベルの尼僧たちに育まれ、当然のことながらエボンの教義に頭のてっぺんまでずっぷり染められ、成長してからは僧兵となる道を選び、強く純真な(エボンにとってたいへん都合のよい)青年となりました。
さて、エボン教にはブラスカという神官がおりました。ブラスカは未だ位は低いものの若くして優秀な人物であり、その聡明さゆえにエボンの歪み、上位層の不正と欺瞞をすでに見抜いていました。彼はしばしば外周のスラムで慈善活動に勤しんでおりましたが、その過程でスラムの「王」と呼ばれる男、ジェクトに出会います。ブラスカに、というよりエボンに対する失望と敵意とを隠そうともしないスラムの王との対話を経て、ブラスカはこの世界が真に『シン』の脅威から解放されるためにはまずエボン教を改革せねばならないと決意しました。
ジェクトの協力を得ながら叛逆の準備を密かに進める中、ブラスカは僧兵アーロンと知遇を得ました。エボンの教えを信じて一片も疑わぬアーロンを見て、彼のような人物をこそエボンから解放せねばならないとブラスカは確信します。一方のアーロンは、お偉方からの評判があまりよくない(優秀すぎるので)ブラスカをはじめのうちこそ懐疑的な目で見ていましたが、聡明でありなおかつ地に足のついた叡智を惜しまないブラスカに、次第に心酔するようになりました。
アーロンは自分の出自を承知していたので、ある時、スラムに「慈善活動」に向かうブラスカに同行を申し出ます。幸運にも城壁の中で育つことができたアーロンは、城壁の外へ追いやられた難民たちに対する後ろめたさを覚え、ブラスカを手伝うことで少しでも罪滅ぼしができればと思っていたのです。
ブラスカの「慈善活動」は、今やジェクトとの作戦会議が主な目的となっていましたから、ブラスカはためらいました。その時はひとまず適当な理由をつけてひとりでスラムに出た彼は、ジェクトにアーロンの話をします。アーロンは骨の髄までエボン教に染まっていましたが、それを抜きにすればたいへん腕の立つ兵であり、直情なところはあるものの決して愚かではなく、また僧兵連中から人望を集めるほどの好漢でした。
話を聞いたジェクトは言いました。スラムのひとびとはジェクトの一声さえあればいつでも決起するだろうが、いざ行動を起こすとなれば、城壁の内側にも呼応する勢力が必要だ。スラムのひとびとは強い想いを持つものの、武器や防具の類がとにかく不足しており、立ち上がったとしてもエボン教の僧兵たちにあっという間に鎮圧されてしまうだろう。しかし、エボンのお偉方が差し向けてくるであろう僧兵たちの一部でも取り込むことができれば勝算は上がる。つまりジェクトは、アーロンを説き伏せて「反乱軍」に寝返らせようと言うのでした。
ブラスカは少し考え、ジェクトの提案を受け入れました。そうして、次の会合の時はアーロンを連れて来ると約束したのです。
みたいな流れで始まり、今まで信じていたエボンのことから何から何まですべてひっくり返され、アイデンティティ崩壊の危機に瀕しているのにジェクトに面白がられ散々馬鹿にされたりかと思えば口説かれたりしてどうしようもなくなっちゃうアーロン。最初は「温室育ちのお幸せな若造が」と腹立ち混じりにからかったりメンタルを責め立てたりしていたのに、ぽっきり折れそうで意外と折れ切らずに真実を受け容れ再び立ちあがろうとするアーロンがだんだん可愛くなっちゃって次第にガチ口説きが入り始めるジェクト。それを横目で見守りつつ、アーロン壊れないで頑張って、ジェクトはもうちょっと真面目に準備して、などと思いながら粛々と反乱成功までのロードマップを書くブラスカ。
っていう半端なAU(これ何AUって言ったらいいんだ? 夢ザナルがないAU?)が書きたいです。でもぼく、ジェク若よりジェク渋派なんですよね。ジェク渋まで書こうとするとめっちゃ長くなるじゃん。つら。